FusionPCBでプリント基板を製造した話(2017年8月)

Maker界隈では有名なFusionPCB(Seeed)に、プリント基板を発注してみました。日本語サイトは最近出来たようです。発注方法などはネット上に多くの情報がありますので、ここでは次にフォーカスしようと思います。

  • スルーホールのメッキ有無(PTH, NPTH)の指定方法
  • 発注~到着まで
  • 基板の品質

1.スルーホールのメッキ有無の指定

発注時に迷ったのが、PTH(メッキ有りスルーホール)とNPTH(メッキ無しスルーホール)の指定方法です。下記のFAQの通りにやれば良いようです。

How can i do if i do not required to make plated through holes?

Plated holes:
Circuit layer: holes have copper
Solder mask layer: holes have openings

Non-plated holes:
Circuit layer: holes have no copper
Solder mask layer: openings don’t matter

FAQに従い、ガーバーデータ上で、

  • PTH→穴を銅箔で覆い、穴上のソルダーマスクを指定する(レジストを剥がす)
  • NPTH→穴の銅箔を剥がす。ソルダーマスクの有無は関係なし。

とすればOKです。

PTHは、ガーバーデータを下のようにしました。

NPTHの場合は、ドリル穴のみにしました。

また、メッキの有無でドリルファイルを分ける必要はあるか、と問い合わせた所、「ドリルファイルは1つにまとめても、2つに分けてもよい。」とのことでしたので、今回は2つのファイルに分けて発注しました。

※ガーバーデータの生成方法については、fusionpcb.jpのよくある質問が参考になります。私はKiCadを使っており、こちらの記事に従って出力しました。

2.発注~到着まで

今回は同じアートワークの基板を、10枚ずつ、2種類の仕様で発注しました。値段と主な仕様は次の通りです。

■青レジスト基板(HASL):4.90USD

外形 層数 レジスト色 表面処理 銅箔厚 板厚 最小穴径 パターン幅/間隔
64mm×67mm 2 HASL 1oz. 1.6mm 0.3mm 6/6mil

■黒レジスト基板(ENIG):29.9USD

外形 層数 レジスト色 表面処理 銅箔厚 板厚 最小穴径 パターン幅/間隔
64mm×67mm 2 ENIG 1oz. 1.6mm 0.3mm 6/6mil

100mm×100mm以内であればとても安価になるので、プロトタイピングに大助かりです。

この条件で発注したところ、次のスケジュールで動きました。

2017/08/14(月):発注完了
2017/08/15(火):ガーバーチェック終了、製造開始
2017/08/25(金):発送
2017/08/27(日):到着
※発送にはDHLを使用

他社のサービスに比べ、製造スケジュールは遅めですが、こんなものでしょう。
FusionPCBはシンガポール経由になるので輸送が遅い、という情報がネットにありましたが、
今回は香港経由になり、発送から到着までは速かったです。改善されているようで好印象です。

3.基板品質

レジストが青と黒の2種類を発注しましたので、それぞれを比較します。

結論から言うと、青レジストの基板は問題ありませんでしたが、残念ながら黒レジストの基板は10枚中7枚に問題がありました。

以下の写真では敢えて、一番悪い状態のものを選んでいます。

全体


部品面と裏面の写真です。
数量はピッタリ10枚ずつでした。

シルク


青:特に問題はありません。印刷も鮮明で読みやすいです。
黒:パッドの上に被っています。これははんだのノリが悪くなるのでNGです。デザインルールを守り、シルク-パッド間のクリアランスは確保しているのですが…。
ちなみに、シルクがパッドに重なりそうな箇所は、FusionPCB側で余裕をもってシルクカットしているらしい(明確なソースは見つけてない)のですが、ズレが大きすぎると吸収できませんよね…。

スルーホール


丸穴→ドリル径0.6mm, 外径0.95mm
長穴→0.8mm/2.2mm

青:特に問題はありません。
黒:丸穴がズレているため、アニュラリング(スルーホールのパターン幅)が細くなり、パターンが切れそうです。
デザインルールを守り、アニュラを0.15mm以上にして設計していたのですが、もっと太めにしておくのが良さそうですね。

表面実装用パッド


0.8mmピッチのQFPパッドの写真です。
青・黒ともに、レジストにズレが見られますが、許容範囲内だと思います。

ロゴと絵


予想より綺麗な仕上がりです。線(レジスト)が崩れている箇所がありますが、元々デザインルールを度外視している部分のため、仕方の無い所ではあります。

余談ですが、もとの絵は↓に投稿しています。

青木れいかさん by けしかん on pixiv

その他


黒レジスト基板のうち1枚だけ、ベタGNDの一部が露出していました。レジストが剥離した状態でメッキされたのでしょうか。これはショートを引き起こす可能性があるのでNGです。

4.総評

安価で使いやすいと思います。複雑な回路の試作には重宝するでしょう。

ただし、「穴・シルク・レジストのズレありき」で設計するのが良さそうです。メーカーのデザインルールよりも余裕を持たせると、問題が出にくくなると思います。(メーカーのデザインルールって何だろう…)

また、ロットによる品質のばらつきは大きいかもしれません。今回の場合、青レジストは良品でしたが、黒レジストは10枚中7枚が不良でした。届いたらきちんと検品した方が良いです。不良品については再生産して頂くよう、お願いしている最中です。

2017/8/29追記:再生産してもらうことになりました。到着したら、本記事に追記します。

2017/9/30追記:再生産の経過について、記事を書きました。

5.余談

基板の撮影にはUSBマイクロスコープと、CameraViewer(橋本 直さん)を使用しております。

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