Roland SC-8850の修理:電解コンデンサ交換

1.概要

RolandのGS対応MIDI音源「SC-8850」の電解コンデンサ交換作業について記録しておきます。
他の機種については、以下を参照して下さい。

2.分解

SC-8850では、「MAIN BOARD」「ANALOG BOARD」「SWITCHING POWER SUPPLY」の3つの基板に、電解コンデンサが搭載されています。分解し、これらの基板を取り出します。

まず、作業前に本体から電源プラグを抜いておきます。下図の○印のように、両側面のネジ4つと背面のネジ3つを外し、筐体を開けます。

次に、「MAIN BOARD」を取り出します。コネクタを抜き、基板上のネジ4つ、背面のネジ6つを外すと、MAIN BOARDを取り出せます。なお、基板中央のネジ付近のコネクタ(CN2)はロック式のため、ロックを押し上げ解除してからケーブルを抜きます。フラットケーブル用コネクタ(CN3)にはロックは無く差し込み式のため、ケーブル先端に近い部分を慎重に引張ることで抜きます。その他のコネクタはコネクタ抜きで抜きます。

最後に、「ANALOG BOARD」(基板上ネジ4つ+背面ネジ3つ)と「SWITCHING POWER SUPPLY」(基板上ネジ4つ)を取り出します。「ANALOG BOARD」のコネクタ(CN2)もロック式です。

取り外した基板は次の通りです。以下の画像は、コンデンサ交換前のものです。


なおSC-88Proと異なり、SC-8850にはボタン電池がありません。

3.電解コンデンサの選定

次の基準で選定しました。

  • Digi-KeyまたはMouserで入手可能
  • なるべく同形状、同耐圧、同容量
  • 105℃品
  • 低インピーダンス品ではないもの
メーカ標準部品 交換用部品 個数 容量 耐圧 外径φD 高さL
メーカ 型式 メーカ 型式 [μF] [V] [mm] [mm]
ルビコン 10YXF470MEFC8X11.5 ルビコン 10YXF470MEFC8X11.5 1 470 10 8 11.5
ルビコン 10YXG2200MEFC12.5X20 ルビコン 10YXG2200MEFC12.5X20 1 2200 10 12.5 20
ルビコン 25YXF470MEFC10X16 ルビコン 25YXF470MEFC10X16 2 470 25 10 16
ルビコン 35YXF47MEFC6.3X11 ルビコン 35YXF47MEFC6.3X11 2 47 35 6.3 11
松下電器産業 ECA1CM221B ニチコン UVZ1C221MED 1 220 16 6.3 11
松下電器産業 ECA1CM330B ニチコン UKT1C330MDD 17 33 16 5 11
松下電器産業 ECA1CM470B ニチコン UKT1C470MDD 2 47 16 5 11
松下電器産業 ECA1EM100B ニチコン UVZ1E100MDD 3 10 25 5 11
松下電器産業 ECA1EM101B ニチコン UVZ1E101MED 2 100 25 6.3 11
松下電器産業 ECA1HM2R2B ニチコン UVZ1H2R2MDD 1 2.2 50 5 11
松下電器産業 EEE0JA101SP パナソニック EEEHAC101WAP 1 100 16 6.3 5.4
松下電器産業 EEE1CA100SR ニチコン UWT1C100MCL1GB 10 10 16 4 5.4
松下電器産業 EEE1EA100SR パナソニック EEEHA1E100AR 2 10 25 5 5.4
日本ケミコン EKMM401VSN560MQ20S ニチコン LGJ2G560MELY20 1 56 400 20 20

詳細なリストはこちら(Googleスプレッドシート)。「ファイル」→「ダウンロード」 でダウンロードできます。

通販サイトのカートはこちら(Digi-Key, Mouser)。いずれも、1台分ちょうどの電解コンデンサです。2021年7月現在、世界的な部品不足の影響で、通販サイトに在庫が無い場合がありますので、ご了承下さい。

4.電解コンデンサの交換

コンデンサを交換します。注意点は以前の記事「Roland SC-88Proの修理:電解コンデンサ交換」と同様です。交換が完了したら、耐圧・容量・極性をチェックし、分解と逆の手順で組み立てます。

5.動作確認

適当なMIDIを鳴らして確認しても良いですが、ここではテストモードを実施します。

あらかじめ、背面のスイッチを[MIDI]にしておきます。[F3] と[PART<] と[INC] を同時に押しながら、POWERスイッチを押し電源投入すると、以下のようにテストモードとなります。テスト項目は全部で9つあり、NEXTキー[F4]を押すことで項目を進めることができます。※システムバージョンにより違いがあるかもしれません。以下はVersion 0113の場合です。

  • TEST 1: VERSION
    • システムバージョンが表示されます。[F2]や[F3]を押すと、CPU Ver.と Param Ver.が表示されます。
  • TEST 2: DEVICE
    • 各ICをチェックします。問題無ければOKと表示され、自動的に次のテストに移動します。
  • TEST 3: SW/LED
    • スイッチとLEDのテストです。全てのスイッチ(VOLUMEやVALUE含む)を押すとOKと表示されます。LED内蔵のスイッチは、押すと点灯します。
  • TEST 4: LCD/ENCODER
    • 液晶画面とエンコーダのテストです。[VALUE] を押すごとに全消灯・全点灯・初期画面 を切り替えます。エンコーダ[VALUE]ノブを回すと、LCDのコントラストが変化します。[EDIT], [DRUM], [EFFECTS], [SOLO]を押すと、テストパターンが表示されます。
  • TEST 5: MIDI
    • MIDIの入出力をテストします。MIDI OUT1-IN1, OUT2-IN2端子間をそれぞれ接続すると、画面の表示が変わることを確認します。以下の画像は、OUT1-IN1間を接続した場合です。
  • TEST 6: SERIAL
    • コンピュータケーブルとシリアルポートのテストのようです。ケーブルが手元に無いので確認していません。
  • TEST 7: SOUND
    • 2つのプロセッサXP1, XP2と、背面のOUT1,OUT2間の出力が正常かどうかを、確認するテストのようです。OUT2とINPUTの端子をループ接続し、STEP[F3]を押し、全てのSTEPでOUT1(または前面のPHONE端子)から音が出力されることを確認します。
  • TEST 8: EFFECT
    • 2つのプロセッサXP1, XP2と、Insertion EFX, Delay, Reverb間が正常かどうかを、確認するテストのようです。[VALUE]を押すことで発音し、STEP[F3]で次のステップに進みます。InsEfxとDelayの場合は約1sディレイ、Reverbの場合はリバーブが掛かった音が聞こえます。
  • TEST 9: FACTORY PRESET
    • 点滅するEDITキーを押すと、工場出荷時の状態に戻ります。念のため、コンデンサ交換後は実施した方が良いでしょう。

6.余談

コンデンサを交換した切っ掛けは、SC-8850が起動不能になったことです。以下のツイートの通りです。

で、とりあえず電解コンデンサを交換してみよう、と思い立ちました。

しかし、電解コンの交換前に筐体を別の部屋に移動させたところ、すんなり起動するようになってしまいました。温度による部品特性の変化を疑い、元の部屋に戻した状態で室温を変化させ実験しましたが、不具合を再現できませんでした。

本来なら起動不能となる原因を調査すべきですが、電解コンデンサを交換してしまいました。交換後不具合は生じていませんが、原因が電解コンだったのかどうか確証は持てずにいます。

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